愛知大学人文社会学研究所 IRHSA より紹介です。

愛知大学人文社会学研究所 IRHSA
2017年度 | |
■第1回![]() | 【公開講座】 功徳と喜捨と贖罪 ―宗教の政治経済学― |
・開催日時:2017年6月3日~7月1日 毎土曜日10:30~12:00・全5回 6月 3日(土) 「解脱」の経済的意味 6月 10日(土) 仏典に説かれる 功徳と廻向のしくみ 6月 17日(土) 人を結ぶ仏教功徳と精霊祭祀の〈経済〉 6月 24日(土) イスラーム社会における喜捨 ―中央アジアのカザフを中心に― 7月 1日(土) 贖罪と喜捨 ―西洋中世の地平― ・開催会場:豊橋校舎 研究館1F 第1.2会議室 ![]() ![]() | |
仏典に説かれる功徳と廻向のしくみ
藤本晃
釈尊は幸福への二種類の道を説いた。一つは修行して悟りを開く、主に出家修行者のための 仏教独自の道。もう一つは善行為をおこなって徳を積み、さらにその徳を他者に廻向してこの世でも来世でも幸福に暮らす、主に在家信者や他宗教(無宗教)者のための道である。 功徳や廻向の観念は仏教の専売特許ではない。来世への転生を前提とするので、輪廻の観 念が早くからあったインドが発祥であろう。バラモンたちは釈尊以前から積徳行として先 祖供養を勧めていた。バラモンを供養し布施することが施主の善行為であり、その功徳を先 祖に廻向するのである。 世界の各地域で生まれた宗教や道徳観念にも、悪を離れて善行為をすべきという共通理解 が読み取れ、それが社会の秩序を保つ一因となっている。その中に、来世の観念や善行為の 功徳を他者に廻向する観念はあるだろうか。来世の幸福まで計算することは現世での生き 方に良い意味での縛りを与え、廻向の観念は他者の幸福にまで思いを広げることになるの
だが。 仏典には功徳廻向のしくみが輪廻や業や心のはたらきの視点から理論づけられている。それを紹介して功徳廻向のしくみを理解する一助としたい。